碾茶は「てんちゃ」と読みます。
茶葉を取り扱う仕事の関係者や茶道に係わる人、またお茶愛好家など、よほど茶葉に詳しい人でなければ知らないお茶かもしれません。
前回抹茶の効能を調べていて、この碾茶についても調べてみたのでまとめてみます。
抹茶の元になる茶葉
今や抹茶は知らない人はいないと言っても過言ではないほどに世の中に溢れています。
茶道で使われているのはもちろん、和洋の菓子類、飲み物、料理などに幅広く使われ、抹茶ブームの観を呈しています。
碾茶はこの抹茶の元になる茶葉なのです。
同じ「てんちゃ」と読む「甜茶」というお茶が中国にあります。
この甜茶はいわゆるお茶の木以外のバラ科やブナ科の植物の葉を使った、碾茶とは根本的に違ったお茶になりますのでお間違いなく( ˘ω˘)
碾茶の栽培
茶畑というとお茶の木の、綺麗に手入れされた緑の畝が幾筋も並んでいる風景を思い浮かべますが、中に緑色ではなく黒や茶色の畝の茶畑があります。
そんな茶畑は碾茶を栽培している畑かもしれません。
それは覆い下栽培、または被覆栽培という栽培方法で、お茶の木を一定期間、黒寒冷紗や葭簀(ヨシズ)などの天井で覆ってしまいます。
葭簀(ヨシズ)を使う方法は室町時代から続く伝統技法で、新芽を遅霜から守る事が元の目的でした。
お茶の美味しさの一つである独特の渋みは、日光を十分浴びる事で、旨みや甘みの成分であるテアニンが渋み成分のカテキンに変化して生まれます。
つまり日光量を減らすとテアニンがカテキンに変化する量が減り、旨みと甘みの強い茶葉ができるのです。
霜対策の天井は旨み・甘みの多い茶葉を栽培するのにも有効だったわけです。ですから碾茶だけではなく、高級茶葉の玉露なども覆い下で栽培されます。
碾茶の製造方法
畑で摘まれて集められた生茶葉は、すぐに蒸し器に入れられ蒸気で蒸されます。
茶葉が持っている味や風味は、そのまま放置すると酸素活性で変化してしまいます。茶葉を蒸すのはこの酸素活性を止めて味・風味を保つ事にあります。
蒸し工程は、碾茶に限らず玉露や煎茶など一般によく飲まれる茶葉にもある工程ですが、碾茶以外のそれら茶葉にはある次の揉み工程が碾茶にはありません。
揉みの目的は茶葉の細胞に傷をつける事で、水分による茶葉の成分の抽出を容易にする為です。簡単に言うとお茶を入れる時に香りや味が出易くするのです。
碾茶にはこの揉み工程がありません。それはお茶を喫する時に粉末状の抹茶にするからです。
お茶の飲み方としては実はこれが原点なんだとか。まずお茶が日本に伝来したのは奈良時代ともいわれています。
現代の私達が普通お茶を喫する時に行う飲み方は煎じる方法で、だから煎茶と言うのですが、この煎茶が生まれたのは江戸時代といわれています。
つまり、それまでの長い間は抹茶で飲まれていたのです。
蒸し上がった碾茶は熱風で吹き上げて、蒸し露を飛ばしながら重なった葉を散らします(散茶工程)。
次にさらに高温で乾燥させたものを荒碾茶と呼びます。
荒碾茶には茶葉と一緒に茎や葉脈がありますから、細かく裁断しては風で飛ばして茶葉だけを選別した上で、茶葉の大きさを揃える振るい分けを行います。
そしてさらに小さく刻んでは乾かして再びを選別する工程を経て、やっと抹茶の元のなる碾茶が完成します。
碾茶の喫し方
碾茶は元から粉状の抹茶で使うものなのですが、煎茶の様に煎じて喫する事も可能です。
しかし揉み工程を経ていない碾茶は煎茶の様に直ぐに成分が溶け出してきません。いわゆる「まだお茶が出ていない」状態が長く続きます。
普通に急須などで入れる場合は、碾茶4gと60℃ほどの湯を約100cc用意します。
碾茶4gを入れた急須に約30ccの湯を注いで3分間浸してから湯呑に注ぎ出します。そしてこれを3回繰り返します。
冷水での水出し
他には冷水による水出し方法があります。
冷水と碾茶を入れたポットを冷蔵庫に一日程度入れておくと碾茶の成分が溶け出します。
いずれにしても、これ位時間と手間を掛けないと碾茶は出ないのです。
しかし出汁を思わせるほどの濃厚でしかも上品な旨みは絶品で、それだけの手間の掛け甲斐があります。
湯出し
実際に碾茶を扱う職人さんが碾茶の味利きをする時は湯出ししています。揉み込んだ煎茶は良い成分もよく出る一方で、雑味成分も一緒に出易くなります。
その点揉んでいない碾茶の味と風味は余計な雑味が出にくくて、その分ピュアな滋味を味わえるのです。
また碾茶は一見青海苔に似ていますが、お握りに振りかけたりすると違った味わいがあり、煮だした後の碾茶を好んで食べる人もいるほどです。
確かに水に溶けだす成分は一部だけなので、お茶が含む栄養を摂る事を考えると、そのまま食べるか抹茶にする方が無駄はありません。
それだけ煮だし・水出しは贅沢な飲み方と言えます。
まとめ:碾茶を一度は飲んでみよう、お茶の印象が変わるかも?
ちなみに紹介しておきながら、私はまだ飲んだことがありません( ˘ω˘)
昨今の抹茶の流行により碾茶として市場に流通する事は多くありませんが、リンクにあるように通販会社やお茶専門店の通販で購入できます。
機会があれば一度碾茶を楽しんでみて、レビュー記事でも書ければと思う次第です。
ではでは(`・ω・´)ゞ