うえのブログ

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人狼ジャッジメントSS「狂人になった男、人狼になりきれなかった女」1〜ロディの章~

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人狼ジャッジメントのSS第一章になります。ゲーム性をまだちゃんと分かっていないので、ストーリーに重きを置いてます( ˘ω˘)

 

アイキャッチもそれっぽいの作ってみました( ˘ω˘)狂人ぽくない?

 

また、人狼ジャッジメントというよりちょっと似せた世界観でオリジナルストーリーと言った流れになっています。

 

なので設定違いや少し強引だったり矛盾点等あってもご愛嬌で見て頂けると嬉しいです。。

 

アイディアを下さった敬愛するにーちさん(@nych87)のイラストを挿絵としてお借りしています!

第一章 ロディの章

1st  episode 僕の嘘

 

僕は嘘をついている。

 

自身がちょっと機転利くのも、少しばかり勘が良いのも、そしてそれらを最大限に活用する術を持つのも知っている。

 

けれど、ここ最近の僕は様子がおかしい。あんなに自分が一番で、その他は弱者。人を見下す事で自分の存在価値を高めていた自分が、だ。

 

メアリー「ロディ、おはよう」

 

あぁ、おはよう。そんな軽い調子で挨拶を返した僕は、今日も君が存在している事に深い喜びを覚える。

 

ーそりゃそうだ、君に全てが降り掛からないように細心の注意を払ったからね。

 

メアリー「今日もまた、犠牲者が出てしまった。こんなにも悲しい気持ちなのに、あなたに挨拶が出来るこの朝が何よりも愛おしい」

 

ロディ「あぁ、僕もだよメアリー。二人で生き残ろう」

 

僕は嘘をついている。

 

一つ、君にそんな気がない事は分かっている事。

  

メアリー「ありがとう。じゃあ行きましょう。みんなの所へ」

 

本来であれば、ここにお互いの存在を確かめ合う熱い抱擁なんてものがあったりするのだが、僕らには必要ない。

 

二つ目の嘘は、君が本当は人間を切り裂く“バケモノ”だと言う事実を知っている事。

 

…最初は一目惚れだった。

 

この洋館に来て、君を見た時から沸き起こった初めての感情に戸惑いを覚えた。理解するのはほんの一瞬だったけど、僕にそんな心があったということ自体驚きだ。

 

すぐにのめり込んで、君の行動を観察するようになった。けれどすぐ違和感に気付いた。

 

メアリー「血が、怖いんです」

 

犠牲者が出たその日、彼女はその華奢な体を震わせその場を後にした。

 

咄嗟に追い掛けて、廊下で呼吸を整えている彼女を見た時に、ゾッとした。

 

それは恐怖というより狂気。獲物を前に、食欲をひたすら抑え切れず本能が漏れ出ている表情。

 

メアリー「あっ、ロディさん」

 

まばたきさえ許されないその一瞬に、彼女はいつもの顔を見せる。

 

ロディ「あぁ、ごめん。つい心配になって追いかけたんだ。その様子だと、もう大丈夫そうだね」

 

その変貌ぶりに驚きを隠せなかった僕は、精一杯の配慮を見せるのが限界だった。

 

メアリー「ご心配、おかけしてごめんなさい。すぐ良くなりますので」

 

この違和感は、ずっと拭えなかった。つまり、その牙を突き立てる瞬間に辿り着くまでそう時間はかからなかった。

 

最後の三つ目の嘘は、本当にこのゲームを支配しているのは君じゃなくこの僕だという事。

 

2nd episode 僕の恋

 

僕は今まで、心の底から女性を愛した事は無い。友情だってそうだ、全ての人は僕を引き立てる為だけに存在している。本当にそう思っていた。

 

すぐにゲームを把握し、絶対の安全と守られる側に立つことが出来た僕は、君への好奇心から一つの罠を仕掛けた。次に吊るのは誰か?

 

本来、生存を脅かす邪悪な魔物は一掃するのが本能。僕もそれは備わっている。

 

だから、この目で愛する者の虚構を確認したかったんだと思う。

 

ロディ「メアリー、では良い夜を」

 

メアリー「えぇ、ロディ。明日もお会いしましょう」

 

既にこの時、メアリーは僕を優秀な駒と認識していた。

 

そう思わせるのは簡単だったし、直感だろう。側に置いて監視するほうが有利だと思ったに違いない。彼女もまた、頭脳戦は優れていた。

 

彼女の部屋と次なる犠牲者、この洋館の構造を考れば今宵の舞台は多目的ホールだろう。

 

多目的ホールは月の光が当たるようになっていて、対面の廊下は光が当たらない為暗く見える。つまり、対面の廊下から監視しやすい絶好の場所になっている。

 

(僕が読んだことのある書物に、人狼の嗅覚・視覚及び聴覚は人の遥か上を行くと記述があった。近付くのは得策ではない)

 

待つ時間が、とても長く感じられた。こうであって欲しくないと思う反面、こうであって欲しい背徳的な希望。奇妙な感覚だ。

 

結果として次なる犠牲者は予想通り現れ、希望通りメアリーの牙に落ちた。

 

だがその姿は、僕の予測に反してただただ美しかった。

 

強さを示す爪や牙、一瞬で喉を刈り取る手際の良さ、そして矛盾するように本能のままに噛み漁る動物的一面。

 

血に塗れたその顔を、月が美しく彩ってくれる。

 

人外のものというのはこんなにも強く恐ろしいものだったのか。僕の固定観念が強く打ち砕かれた瞬間だった。

 

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見惚れていると、一瞬目が合った気がした。僕は急いで自室に駆け込み、全てを覆い被せて闇に溶け込んだ。いや、大丈夫だ。いくら人狼と言えど見えるはずがない。

 

…それよりもまさか、初めて恋した女性が人狼で、排除対象にしようと考えた瞬間にまた恋に落ちるとは思わなかった。

 

僕はもう、彼女にしか。彼女だけしか愛せない。

 

彼女に愛されなくとも。

 

3rd episode 僕の焦り

 

僕は少しずつ、君が生き残れるように邪魔者を排除していった。

 

思いが届かなくても、僕に出来る事はこれだけなのだ。

 

メアリー「私は、少し不安になっているの」

 

珍しく、君がそんな不安を打ち明けてきた。それもきっと、僕を繋ぎ止める為の工作なのかもしれない。けど、そんなことはいい。嘘でも、君との時間は僕の中で光り輝く。

 

ロディ「君の不安が知りたい。僕で解決出来るか分からないけど、なんだって力になりたいんだ」

 

メアリー「ありがとう。でも、やっぱり大丈夫。人に弱みを見せるなんて、私らしくないのかも」

 

君は、嘘をついた。そしてそれが本心だろう。今まで戦略的に弱みを見せていたのが分かっただけでも嬉しい。少なくとも、今の君が本当のメアリーなのだから。

 

ロディ「人は、弱みを自覚する事で愛を覚えるんだ。それが自分でも、他人でも。今の君は美しい。だから、不安を覚えたら僕に伝えるだけでもいいんだよ。全て受け止めてみせるから」

 

彼女は、何とも言えないこらえた顔をした。何かを言い出しそうな、伝えたいような。

 

直後に目を伏せ、目を閉じた。戻った時はいつもの冷徹な顔だった。

 

メアリー「ありがとうロディ。何かあったら相談させてね」

 

そのまま彼女は去っていった。思い詰める所があるのは間違いない。

 

ーさて、そろそろもう一匹の人狼を始末しよう。彼は良いように動いてくれたがこれ以上は僕の身の危険を感じる。

 

今のこの美しい世界だけは、誰にも邪魔されたくないのだ。

 

それに大丈夫、少し不安を煽って矛先を調整してやれば簡単に大衆は動く。今日の襲撃さえ終われば、もう僕のゴールは目の前だ。

 

違和感に似た一抹の不安を、僕は母の形見のロザリオを握り締める事で無かった事にした。

 

4th episode 僕の誤算

 

朝から、メアリーの様子がおかしい。僕を見て驚きの顔を隠せない。

 

ロディ「どうしたんだい、メアリー?」

 

メアリー「あ、また会えて嬉しいわ、ロディ…」

 

明らかに動揺したその声と動きが合っていない。すぐに立ち去ってしまった。やはり仲間の吊りは早すぎただろうか。

 

ロディ「…誰だ?そこにいるのは」

 

ゲイル「嫌だなぁ、そんな言い方は。私だよ、ロディ君」

 

突然現れた小太りなこの男は、とても演技派だと思う。見抜けなかったのもあるが、初期は臆病さと常に慌てる醜い姿勢が刺激となり、僕の眼前から居ないものとして扱ってしまったのだ。

 

何故このような男が吊られず、噛まれずに居たのか不思議でならなかった。しかしこの男もまた、裏では自分の安全を上手く操作していたに違いない。

 

(体格の割に、意外と小顔なのも僕の好みに合わない。僕なら顔で即吊りの対象だ)

 

僕の中では相当に危険な人物として挙がっていたが、先に処理する事柄が多かったのでここまで羽を伸ばさせてしまった。

 

ゲイル「しかし、メアリーさんですねぇ。ロディ君はどう思います?」

 

ロディ「どうって、何が言いたい?」

 

ゲイル「もちろん!じ・ん・ろ・うですよ、あなた程の者が疑って無いとは言わせませんよ?」

 

ロディ「(やはり、もっと早くに始末しておくべきだった)あぁ、だがお前、分かってて聞いてきてるだろう。怪しいのは彼女じゃない」

 

ゲイル「…あなたはかなり、頭もカンも鋭い。仰る通り、私はあなたも疑っています。現時点じゃあなたが濃厚ですがね」

 

ロディ「ふ、分かっているなら、お前がこの先どういう行動をするかで全てが決まるだろう。落とさなくていい命を、わざわざ落とす必要も無いだろ?」

 

ゲイル「左様で…」

 

こんな時の為に、僕は危険を犯してまで自分が一部の人に疑われるように仕向けて来た。でもそろそろ限界だろう。

 

残り少ない吊り上げ権限を持つゲイルは、僕とメアリーが共謀で人狼だと思い込んでいるはずだ。だが決定的な証拠が無い。故に今、牽制に来たのだろう。

 

しかし僕が他の村人達と良好な関係を保てている以上、ゲイルがメアリーや僕に何かをすれば返り討ちに遭う可能性が高い。

 

つまり、現時点では不安定ながら完全な均衡状態を保てている。

 

問題としてはただ一つ。これ以上の時間経過は、僕よりもメアリーの危険性が遥かに上がる事だ。

 

この現状を打破し、僕の望む未来を考えた時。一つの決意を迫られる事になった。僕は少し、思いに耽る事にした。

 

5th episode 僕の決意

 

手が、震える。

 

いくら決意したとしても、僕がやろうとしている事は自分の存在を否定すること。

 

綺麗事でも何でも無く、ただ醜い自分の葛藤を知ってもらいたいのかもしれない。それでも後悔は無い。ちょっと怖いだけだ。

 

ロディ「では、今日の話し合いはこれで…」

 

話し合いで得られた結果、しばらく処刑は行わず様子を見ようという事だった。

 

もう村人も残り少ないし、大衆は僕の意見に従う。だから人狼が行動しないであろう、というそれらしい見解に頷くしか無かった。

 

ゲイルも僕の意図を先読みしてくれて、しばらく様子を見ようという和解案を出してきたつもりなのだろう。

 

ーゲイルよ、君はもう終わりだ。君は明日の朝に、僕が仕掛けたトラップによって村人に処刑されるのだ。

 

少しでもメアリーをその手に掛けようとした罪の報いを受けるがいい。

 

メアリー「ロディ、良かった。私、あなたとお話がしたくて」

 

ロディ「奇遇だね、僕も少しお腹が空いていたんだ。君とは、まだ踊った事が無かったね」

 

メアリー「えぇ…ご一緒して下さるの?」

 

ロディ「もちろんだとも」

 

 

君が僕を求める理由は知っている。最後の舞台は、僕で終わりにしよう。

 

To be continued...

 

 

次回・メアリーの章!(゚∀゚)

 

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