うえのブログ

気になったこと、思い立ったこと、調べてみたことなどを書き留める場として使っています。

人狼ジャッジメントSS「狂人になった男、人狼になりきれなかった女」2〜メアリーの章~

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人狼ジャッジメントのSS第二章になります。多分、こちら単体でも読めます( ˘ω˘)

 

第一章はこちら

www.uenoyou.net

 

※人狼ジャッジメントというよりちょっと似せた世界観でオリジナルストーリー展開です。

 

設定違いや少し強引だったり矛盾点等あってもご愛嬌でお願いします。。

 

妄想世界を拙い言葉と表現で綴るなんちゃってSSなので、面白さは保証しません。

 

アイディアを下さった崇拝するにーちさん(@nych87)のイラストを挿絵としてお借りしまくっています!

第二章 メアリーの章

6th episode 私の存在する理由

 

私は人狼だ。

 

人狼と魔女しか知り得ない知識だけど、人狼には上位と下位の階級があって。

 

上位の中でも更に生まれつき人狼であるものと、自らの意思で魔女に忠誠を誓い「儀式」によって人間を捨てるもの。順に強さと希少価値と位が決まる。

 

対して下位。人間が「呪い」によって強制的に人狼化、ほとんどの記憶と引き換えに人では得られない力を手に入れる。

 

そして私は下位。人間だった頃の記憶をほとんど失っている。

 

ーおねえちゃん。

 

唯一あるのは、この記憶だけ。まだ年端も行かぬ小さな子が道端の花畑へ走って行き、私は追い掛ける。何を作っているのか、手元に集中している様子だった。

 

「おねえちゃん、出来たよ!」

 

そう言って小さな手が私の髪に触れる。

 

メアリー「これは…」

 

「おねえちゃんキレイだから、お花が良く似合うんだよ。ほらね!」

 

そう言って、屈託のない笑顔を見せる。

 

「パパとママがいなくても…おねえちゃんだけいればいい」

 

あぁ、そっか。お母さんもお父さんも、帰って来れなかったんだっけ。

 

メアリー「うん、私も一緒。ーーさえ居れば。そろそろいこっか?」

 

「うん!」

 

もはや名前を思い出せないその子を、私は取り返す為に魂を悪魔に売り渡したんだ。もう少しで思い出せそうな気がする…。

 

ーおい、そろそろ起きろ。

 

不意に、回想にそぐわぬ男の声が響き渡る。

 

「もうそろそろで例の洋館だ、準備をしておけ」

 

もたれ掛かっていた体をゆっくりと起こし、馬車の中を見渡す。…把握。

 

気付いたら寝てしまっていたようだ。毎回このゲームが始まる前は、決まって同じ夢を見る。

 

「次は上物の魂が多数あるという噂だ、魔女様も喜びになる…お前も今回頑張れば、妹を解放してもらえるかもしれないぞ?」

 

ゲラゲラと下品な笑い声を垂れ流しながら、望みの薄い言葉を口にする。

 

私は唯一のつながりである髪飾りに手を当て、名前も顔も思い出せない妹を想う。

 

例え望みが薄くたって、私はこのゲームをくぐり抜けて会わなきゃいけない。それが私の生きる意味なのだから。

 

7th episode 人としての自覚

 

こういう場で皆が顔を合わせるのは決まって食堂。何か決まりでもあるのだろうか。

 

ろうそくに灯された火が、これからの運命を予兆しているかのように妖しく周囲を照らしている。

 

「それでは、皆様お互いの顔を覚えましたかな?」

 

照らし出された顔を歪めながら、白髪交じりの老人が笑う。

 

「もし、中に人狼が交じっていたら今夜、誰かが死ぬじゃろう…ハッハッハッ…コワい、コワい!」

 

これも見慣れた光景。上位タイプの人狼は人を操るかモブキャラを作り出す能力があるに違いない。

 

-今夜、この爺を噛む。お前は何もしなくていい。

 

-了解。

 

人狼は上位者からの起点があれば、双方向でやり取りが可能なホットラインがある。

 

こうして人狼は人の中に紛れ、一人一人狩って魂を魔女へ献上する。

 

何故、このようなゲームが罷り通るのだろうか。目的も手段も興味が無いので、知る由も無いのだけれど。

 

いつものように集まった人間達を観察し、誰が利用出来そうか見ていると一人の男が目に止まった。

 

(歳は同じか少し下くらいだろうか)

 

気位と知能の高さが顔に出ている。由緒ある血筋の跡継ぎ、そんなイメージだ。

 

目が合うと声には出さないが、軽い会釈と口の動きからこちらに好意的なのが分かる。この男は使えそうだ。

 

メアリー「あの」

 

老人のまた明日、という掛け声と共に会は終わりを告げる。タイミングを見計らって、先程の若い男に声を掛ける。

 

「やぁ、声を掛けて頂くなんて大変光栄です。メアリーさん…ですよね?」

 

メアリー「えぇ、すいません。先程は少し緊張しておりまして。良ければもう一度、お名前を教えて下さいますか?」

 

その男は少し驚いたような、それでも優しさを顔いっぱいに表現しながら答えた。

 

-ロディ、と申します。

 

…自室に入り、ベッドに倒れ込むと先程の記憶が蘇る。ロディ、と言ったか。

 

人に興味を持てない私が、珍しい。こうして記憶を反芻するなんて。

 

メアリー「フフ、どうせすぐ忘れるんだから…」

 

仰向けになり、不意に放たれた言葉は暗い天井へと吸い込まれていく。自分に言い聞かせているかのよう。

 

けど、本当に私の記憶は曖昧なんだ。毎回のゲームの事はほとんど覚えてないし、やることはいつもと変わらない。

 

月明かりに照らし出された私の口元は、笑っていたのだろうか。

 

8th episode 心の行方1

 

朝一、皆が集まる食堂で悲鳴が響き渡る。アイツが例の老人の魂を奪い取ったのだろう。

 

素知らぬ顔で食堂へ足を運んでみた。しかしその直後、不意に目眩が私を襲う。

 

「…!メアリーさん、大丈夫ですか?」

 

しまった。このままでは正気を保てない。

 

メアリー「ごめんなさい、こういう惨状には慣れていなくて…」

 

そう言って足早に食堂を出る。目眩?そんなの嘘のように小走りで廊下を走り抜ける。

 

ー危なかった。あのまま居たら、部屋いっぱいに充満している血の匂いに反応してしまう所だった。

 

そうだ、思い出した。アイツの悪い癖だ。速やかに魂を奪い取って終わりにすればいいのに、最初の犠牲者だけは派手に“散らかして”しまう。

 

メアリー「ふぅ、あれはひどい。あんな風にされたら…食べたくなってしまう」

 

我ながら、この瞬間だけはどうしても馴染まない。もう一人の自分がいるようだ。

 

「メアリーさん!」

 

足音が近付いて来た。ここで怪しまれてはマズい。呼吸を整え、いつもの私を取り戻す。

 

メアリー「えっと…ロディ…さん?」

 

ロディ「良かった、つい心配になってしまって…もう大丈夫?」

 

メアリー「えぇ…ごめんなさい、心配をお掛けしてしまって。少しばかり休んだら良くなったわ」

 

それは良かった、と胸を撫で下ろすように彼は言う。どうやら上手く隠せたようだ。

 

しかしこの男…ロディは奇妙な違和感を覚える。紳士にしては私を気に掛け過ぎだろう。

 

(少し、傾向や性格を掴んでおこうか)

 

メアリー「ロディさん、申し訳ないのですけど…実はもう食欲が出なくて。少し休みたいので、部屋まで送って下さらないかしら」

 

ロディ「それは大変光栄です。メアリーさんの体調が心配ですが、私が責任を持ってお部屋までお連れしましょう」

 

9th episode 心の行方2

 

それから、他愛の無い話をした。

 

どうやら彼は察する力がとても高い。私が自分のことを話したくないと言う事にすぐ勘付き、自分の話を飽きない様に散りばめてくれた。

 

ロディ「この地方は、春になると一面に綺麗な花が咲くんです。この地区特有のもので香りは気持ちを華やかにし、シンプルかつ洗練された可愛らしさは図鑑内でも随一です」

 

おまけに博識だ。恐らく多くの書物を読んでいる。

 

しかも会話のテンポは独りよがりではなく、しっかりこちらの反応を見ている。

 

それでいてさり気ない。此れ程の気遣いが出来るならば相当の切れ者であることは容易に想像が付く。

 

(思わぬ収穫ではあるが、この男は危険だ。今のうちに懐柔すべき…しかし、どうやって?)

 

一瞬の悩みも、彼にはお見通しだったのかもしれない。彼は急にフッと優しい笑みを向ける。

 

メアリー「あ、ごめんなさい。つい考え事を」

 

ロディ「大丈夫ですよ、無理はありません。ところでメアリーさん、その髪飾りはとても大切にされているとお見受けしますが?」

 

メアリー「えぇ、でも誰からもらったかも、どんなお花なのかも分からないんです。けど、何かのつながりを強く感じるんです」

 

ロディ「なるほど。じゃあ何かこの地に繋がりがあるかもしれません。今お話をしたこの地区特有の聖母花、それがその花。ーーなんです」

 

ふと、あの頃の花畑が目の前に広がった。太陽が眩しい、一面に咲く花の中にあの子がいるようだ。

 

今彼は何と言ったのだろう、聞き取れなかった。けれど、とても大事な何かが私を揺さぶっている。

 

ロディ「どうか、しましたか?」

 

メアリー「すいません、今の話、詳しく教えてもらえませんか?!」

 

ロディ「急に、どうされましたか?何か気になる点でも?」

 

私の急変に驚きを隠せないのだろう、それでも構うものか。

 

メアリー「大事な、大事な何かなんです…私にとって、思い出さなくちゃいけないような…」

 

ロディ「メアリー…さん…?」

 

 「おーい、お前ら!」

 

急に呼びかけられた声に振り向くと、髭をたくわえた男がこちらへ歩いてくる。

 

「今回の事で少し話し合いが必要になった、ちょっくら会議室に来てもらえるか?」

 

とんだ邪魔が入った。まぁ仕方ない、これから疑心暗鬼の心理戦が始まるのだろう。

 

(もう少しで辿り着けたのに。私は、ワタシは…?)

 

何を得ようとしたのだろう、すごく大切なものだった気がする。

 

ロディ「行きましょう、メアリーさん」

 

視線を感じ、隣に目をやるとロディは全てを悟ったような顔でにこやかにそう言った。

 

…そうだな、こいつを利用しない手はない。忘れてはいけないのだ。

 

私は人狼だ。

 

10th episode 疑念と確信

 

ー今宵は任せたぞ。俺は手を下せないからな。

 

ー了解。

 

アイツが直接語りかけてくる声は、なんだか気持ちが悪い。

 

まるで全身をまさぐられるような気分になるのだ。

 

(しかし、なんだってこんな日に見回りを頼まれたのだろう)

 

私が人を噛む場面は少ない。下位は基本、場を乱しつつ上位のサポートに徹するのが定石だからだ。

 

今回は偶々、見回りという新しい取り組みを導入する運びとなり、アイツが選ばれたそうだ。

 

ふと、ロディの顔が浮かぶ。…まさかね。彼は頭の回る策略者だが、どこか勘違いをするきらいがある。

 

しかし、少しずつ何か、歯車がズレつつある感覚はあった。

 

「こんばんは、メアリーちゃん。お話って…?」

 

メアリー「ありがとう、少しここで話すのはなんだから…ホールの方へ行きましょう」

 

本日の哀れな犠牲者。せめて苦しまないように、一瞬で息の根を止めようと思う。

 

ーここから意識は無い。最初のスイッチは喉笛に噛み付いた瞬間から、溢れ出す血液を口いっぱいに広げるだけで仕事は終わる。

 

(多分、こんな調子だから下位は役に立たないんだろうな。まるで知能の低いケダモノだ)

 

しかしここでふと、私の意識が元に戻る。視線はホールの窓から外、対面の廊下だ。

 

メアリー「今、影が動いた…?」

 

思わず言葉に出るほど、焦りを感じる。見られたのなら非常にマズい。

 

傍らには恐怖で泣き濡れた顔を晒す、先程まで人だったものが転がっている。

 

ー確認しよう。痕跡を見付けられるかもしれない。

 

血を払い、移動を勘付かれないよう声・気配を消して速やかに辿り着く。

 

(…僅かに人のニオイが残っている)

 

そしてこれは嗅ぎ慣れた匂いだ。落ち着くような、それでいて狂気を感じられる他の異性には無い危険な香り。

 

メアリー「…ロディ、か」

 

彼の部屋の前に立つ。鍵はされていない。あれほどの警戒心を持つ男が、果たしてこのタイミングで鍵を開けたまま眠るだろうか?

 

そっとドアを開けると、彼は掛け布をかぶせたまま息を殺しているようにも見える。

 

ーどうする、仕留めるなら今…。

 

いや、まず証拠が無い。そして今やってしまうのは非常に危険。もし見たとしても、この現状を鑑みれば彼は皆に伝えるような事はしないだろう。

 

(いいよ、仕方ない。今回だけは見逃してあげる)

 

そこにいるであろうロディに、私は微笑み掛けながら扉を閉めた。

 

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届かないなら、祈りなどしない。おやすみロディ。

 

11th episode 私の利用価値

 

メアリー「ロディ、おはよう」

 

 ロディ「あぁ、おはようメアリー」

 

お互いに意識せずとも、会話する機会や時間は増えた。敬称もない。ただ、恒例となったこの挨拶も少しずつ終わりに向かっている。

 

メアリー「今日も犠牲者が出てしまった…一体いつまで続くのだろう。けれど、こんな気持ちであってもあなたに挨拶が出来る。この瞬間は何よりも愛おしく感じてしまう」

 

ロディ「あぁ、僕も同じ気持ちだよ。僕は二人で乗り越えたい…君となら」

 

刹那の間。見えないやり取りが交わされているようだ。

  

メアリー「ありがとう。じゃあ、そろそろ行きましょう…みんなの所へ」

 

私は敢えて、距離感を保っている。例えばこの時、お互いの存在を確かめ合う為の接触を欲したとしても、この気持ちは偽物なのだ。

 

彼はいずれその魂を魔女に献上しなくてはならない。私は人狼であるが故に、彼に感情移入をすべきではない。

 

もう残り人数も少ない。後継者争いだとか言う権力戦争の背後に隠れた、人狼による魂狩り。どちらも終盤に近づいている。

 

ロディ「では、これより話し合いを始めます」

 

毎回恒例の話し合いでは、徐々に頭角を現して来たロディが話し合いの取りまとめをする事が多くなってきた。

 

何故か彼が進行を務めると、妙に心地が良い。彼の声は多くの人を惹き付けるだろう。それでいてテンポに淀みがない。

 

(…何を考えているのだろう、私は)

 

彼を観察していると、彼の声しか聞こえなくなる瞬間がある。客観的なようで、その実何も話を聞いていないのかも知れない。

 

ー今夜、この進行役を噛む。

 

不意にまた、私を強制的に引きずり下ろす不愉快な声。ロディの声が心地良かっただけに、叩き付けられた不快感は拭えない。しかも、なんだって?

 

ーそれは、ロディですか?

 

ーあぁ、そうだ。タイミング的にもう今夜しかあるまい。

 

いつになくざわめく心。咄嗟に出た言葉は何のとりとめも無かった。

 

ーですが、彼は多くの村人の支持を得ています。ここで消してしまうのは我々を窮地に立たせる事を意味するのでは…。

 

ークチ、ゴタエヲスルナ

 

突如遅い来る強い頭痛。耐え切れない程の負荷が、生存本能を諦めさせる。

 

ーアトデコイ、ハナシガアル

 

ふと気付くと先程までの強い痛みは消え失せていた。冷や汗が全身を伝う。

 

(所詮、私は自分の運命に抗えないのかも知れないな…)

 

「お前、忘れてるんじゃないだろうな」

 

アイツの部屋に入るなり、私は髪を捕まれ壁に叩き付けられる。

 

「忘れてるなら、思い出させてやる」

 

先程の頭痛の、更に数倍強いものが流れ込んでくる。麻痺してしまったのか、痛みというより浮遊感に似た何かを感じる。

 

次に見た情景は、父と母。二人が多くの人狼に屠られている姿。

 

精一杯逃してもらった私の行く先を待ち構えて居たかのように、アイツは泣き叫ぶあの子を人形のように捕まえる。

 

ーオモシロイ…トリヒキダ。

 

私はあの子の為にも全てを捨てなきゃならなかったんだ。

 

12th episode 不安

 

今夜、ロディは噛まれる。それは免れない事実。

 

だからもう、お別れをしようと思う。確かにあなたとの時間は、少しばかり楽しかったと思えるから。

 

メアリー「少し、不安になっているの」

 

何か話そうと決めた訳じゃない。けど、自然と自身の気持ちに気付いて欲しいと思ったのかも知れない。

 

ロディ「僕で良ければ、君の不安を知りたい。解決出来るか分からなくても、力になりたいんだ」

 

なんとなく、期待していた答え。聞けただけでもう十分だろう。

 

メアリー「…ありがとう、やっぱり大丈夫。ずっと一人だったから、人に弱みを見せるなんて私らしくないのかも」

 

そう、これでお別れ。私もきっと、明日から彼のことを少しずつ忘れて、終わる頃にはこのゲームのことすら覚えていないだろう。

 

それでも彼は何かに気付き、もがいたのかも知れない。

 

ロディ「人は、弱みを自覚する事で愛を覚えるんだ。それが自分でも、他人でも。今の君は美しい。だから、不安を覚えたら僕に伝えるだけでもいいんだよ。

 

全て受け止めてみせるから」

 

ーなんてことだろう。

 

とても、言い知れぬ感情の波。胸の痛みと呼吸の苦しみが同時に起こる。

 

真っ直ぐに見つめる彼の目を、私は見つめ返すことが出来なかった。

 

何のために、私は今苦しんでいるのだろう。何が、私を苦しめているんだろう…。

 

伝えたい、彼に身の危険を知らせ、共に逃げ出す選択肢もあるんじゃないだろうか?

 

メアリー「ありがとう。何かあったら、相談させてね」

 

精一杯の冷静を装って、その場から逃げる事しか出来なかった。

 

これでいい、これで良かったんだと自分に言い聞かせながら。

 

暗闇の中、見上げる天井は相変わらず私の気持ちを見透かしているかのようだ。

 

メアリー「さよなら、ロディ」

 

もうこれで、私が不安になることも。気の迷いを起こす事も無くなる。彼はもう居ないのだ。

 

13th episode 反転する敵意

 

おかしい。アイツからの連絡が無い。

 

いつも決まって早朝に不快な声で私を起こすアレが無い。

 

(逆に爽快な朝ではあるのだけれど、何かがおかしい。しかも、かなり深刻な)

 

急いで身支度を整え部屋を出ると、居るはずのない人物と対面する。

 

ロディ「おはよう、メアリー。どうしたんだい?」

 

メアリー「あ、おはようロディ。また、会えて嬉しい…」

 

愕然とした。震えそうになる声を抑えることで、緊張は一気に高まる。本来喜んでも良いはずなのに。

 

何故だかロディの笑顔が怖い。

 

すぐに今起きている事態を把握しなくては。早々にその場を立ち去る事にする。

 

しかしロディが見えなくなった所で気になる声が聞こえてきた。ロディともう一人、何か話をしている。

 

「今回、緊急で襲撃を提案されたそうですねぇ」

 

襲撃?隠れる場所が無いので、少し遠くから耳をそばだてる。

 

「メアリーさん…どう思います?人狼を疑って…」

 

核心に迫る勢いだ、この内容は。そして恐らくロディを噛もうとしたアイツは人間の襲撃により処刑され、襲撃を示唆したのは紛れもなくロディそのものだろう。

 

それよりも、この男とロディが結託してるのは間違いない。既に私の正体は知られている。

 

ロディ「…この先どういう行動をするかで全てが決まるだろう。落とさなくていい命を、わざわざ落とす必要も無い」

 

…そうか、そういうことだったのか…。

 

裏庭へ出ると、見せしめの為に吊るされたアイツが居た。

 

今回に限っては、アイツが正しかったのかも知れない。結果的に私は恐らく利用され、あの男の手によって窮地に立たされた。

 

彼が言うように、私の出方次第でいつでも処刑出来る準備は整っているのだろう。

 

相当な切れ者だ、彼は。気付いた頃にはもう既に遅い。

 

14th episode 私の手で

 

ようやく終盤になって、私の思考回路が少しずつ整ってきた。

 

恐らくロディはあの時、私が人狼であることを知った。

 

そしてアイツが人狼である事も早くから察知し、様々な策略を巡らせた。勘違いのきらいがある?今では私の浅はかさを悔いるだけだ。

 

このゲームを降りることは、私の生きる意味を断つ事でもある。もう逃げられない。

 

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【人狼ジャッジメント】「人狼ジャッジメントらくがき5枚 その2」イラスト/nych87 [pixiv] 

 

ロディ…人狼よりも恐ろしい男。私が今夜、どういう行動に出るかも分かっているだろう。

 

それでも、一つ聞いてみたい事がある。聞き届けた上で、なんとしても私の手で葬りたい。

 

もちろん魂は奪わない、それがせめてもの私に残された情だろう。例えこれが罠で、私の命が危険に晒されようとも。

 

…彼は、私のこの気持ちまで予測しているだろうか。

 

再び、彼の部屋の前に立つ。

 

(この前の甘さはもう無い、今回はもう見逃すことが出来ない)

 

ノックと共に、燭台の火が大きく揺れる。

 

火中に移る私の姿は、業火に灼かれながら涙を流しているようだった。

 

 

 

To be continued...

 

 

 

次回!ロディ死す!じゃなかった(;゚∀゚)

 

罪業消滅の章、鋭意製作中(*゚∀゚)